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前夜祭短編:「聖夜の衛士 あふたーでい」



二年前、終わりの年代記に書いた「聖夜の衛士」が丁度クリスマスネタだったので
年代記2もある事ですので珍しく番外的に短編です。

「聖夜の衛士」を読んでいないと意味が分からない内容ですので
読んでいない方はご注意を






「あー……」
喉の奥から絞り出すように呻いて首を回すとゴリゴリと嫌な音がする。
無理が効かなくなってきたな、と西城・斯衛は自虐混じりの笑みを浮かべた。
肩を回して体をほぐし、手近なベンチへ腰を降ろす。
周囲、UCATの地上偽装棟脇に設置された屋外喫煙スペースには自分以外の人影はない。
上着代わりの白衣から煙草を取り出し口に咥えた。
一年の終わりを間近に控えた今、外気温も低く空気は刺すように冷たい。
オイルライターに火をつける。
眩しさに目を細めた後、ゆっくりと煙草の煙で肺を満たす。
溜息のように息を吐くと白い煙が風邪に散って消えていった。
煙の行き先を目で追って、ようやく意識が現実へと引き戻されてきたのを自覚した。
「あーっと、今日は何日だ……」
ここ数日、ずっと仕事で篭りきりになってしまい日付感覚が曖昧だ。
元々UCATはその性質上、地下に施設が集中している。
照明の量で昼と夜の区別がつくようにはなっているが、それも作業スペース以外の照明が落ちるだけだ。
時間感覚の曖昧さと睡眠時間の不規則さからくる頭の芯の痺れを、煙草と空気の冷たさが取り払っていく。
携帯電話は何処に入れたのか記憶がなく、適当にポケットを漁ってみるが何も出ない。
あるのは首からぶら下げた社員証と、定期兼用のICカードに煙草とライター。
どうやら携帯電話は数日前から鞄の中に入れっぱなしになっているようだ。
実家から連絡が来る事も稀で、放置していたとしても問題は無いのだが、
「友達すくねーのが如実に現れててなんだかなー」
元より中学時代の友人達とは高校進学の際に尊秋多学院に入った時点で縁は切れたし、
高校時代はUCATの隊員としての行動を優先していて、友人をまともに作ろうともしなかった。
もったいない事をしていたようにも思うが、当時の自分にとって最善の行動であった事だけは間違い無い。
後悔することもあるが、否定だけはする気にならない。そんな時間だった。
「まあでもその結果がボッチじゃなぁ……世間様的にはクリスマス近いってのに」
日本人の感覚で言えば、クリスマスというイベントは恋人と過ごすというのが一般的だ。
休日に街中へ出た際に幸せそうなカップルを見て微笑ましいとは思うが、嫉妬はさすがに出てこない。
しかし、独り身である自分自身を省みて、苦い笑いが出てくる事もまた事実だった。
「もう七年になるのか」
全竜交渉と、それに付随する戦闘から既に七年。当時は高校生であった自分が、今では四捨五入して30歳という年齢なのだから驚きだ。
「……そうだよな、もう年齢追い越しちまったんだよなぁ」
思い出すのは一人の女性。命の恩人で恋人だった人の事だ。
当時は年上だった彼女はもう年齢を重ねる事はなく、歳の差は開くばかり。
好きだった。惚れていた。相手も同じ思いだった事に喜んで、喪われた事に絶望して。
思えば自分の青春というヤツはあの時間に集約されていたのだろう。
今でも彼女の命日には墓参りに行っているあたり、吹っ切れていないのだろうとはよく言われる。
そもそも、全竜交渉が終わったあの日に自分の中での決着はついている。
UCATに入った事も彼女――五十鈴・巴の存在があればこそだ。
同様の理由でUCATに協力していた半竜のリィクも、全竜交渉後の事後処理に目処がついた段階で辞めていった。
今では気ままに旅をしていると聞いている。少し前には一人の少年を預かる事にしたという話も聞いたが、その少年の安否が不安でならない。
何故リィクのようにUCATを辞めなかったのか。
今でも忙しさから開放された時に似たようなことを考えてしまうが、結局は面白そうだからという単純な理由にいきついてしまう。
学院を卒業し、復興で人手の足りなかったUCATにそのまま就職してしまったので今の身分は開発部所属の職員だ。
軍神や剣神といった上位戦力向けではない、一般隊員向けの機殻兵装のテスターと開発が仕事の内容だ。
最近ではテスターとしてよりも技術寄りの方向に比重を移し始めているが、道の険しさを実感する毎日を送っている。
あえてそうして忙しさの中に身を置いているのも、こうした取留めのない事を考えてしまうなのからかもしれない。
「どこで区切りを付ければいいんだろうな、ホントに」
と言うよりも、何処を区切りと認識していいのかが分からないのだ。
自分なりに巴の死を受け入れたのは間違いない。ただ、それが本当に区切りなのかどうなのかが判断出来ない。
新しく恋人を作ればよいのか。たまに思い出すだけで、ゆるやかに忘れていくのが正解なのか。
「こうやって考えこんでる時点でアウトだよな、本当は」
ベンチに深く身を預け空を仰ぐ。
最近は喫煙者の肩身が狭く、この喫煙所も灰皿とベンチがあるだけで屋根も無い。だが、
「おー、星が綺麗だ」
周囲の建物の明かりはあるが、それでもなお夜空に浮かぶ星はよく見える。
「なるようにしか、ならないよな」
元より深刻な悩みでもないのだ。
ただ、時折立ち止まった時に前へ向かう原動力にするだけだ。
今も昔も楽しくて、ただその楽しさの中身が違うだけ。その楽しさの違いを成長としてかみしめて、多分これからも生きていく。
「西城さん、やばいですピンチです!」
「……どうしたよ後輩くん」
人生について割りと真っ当な考えが出始めた所で、まるでシリアスは許さないとばかりに乱入者が現れた。
年齢が離れている為同じ時期に通う事こそなかったが、お互いに尊秋多学院卒業生という共通項を持つ後輩だ。
「大城全部長を筆頭にカップル撲滅を掲げる一大勢力が発足して、皆馬鹿みたいにテンション高いんですよ!
 彼女持ちも対象だーとか言い始めて俺まで追われる始末で……火消し手伝ってくださいよ……」
そういや機竜乗りの後輩くんは確か開発部所属の眼鏡っ娘と付き合っていたなと思いつつ、
「うわー、もう面倒だからココで避難してようか。大城全部長なら八号さんあたりが止めてくれるって」
「残りの人達どうするんですか」
「既婚者がどうにかするんじゃねーのー? というかそこで何故俺に助けを求めにきたんだい」
「いやだって西城さん生身戦闘系じゃないですか。止めるには武力が必要ですよ武力が」
確かにUCAT内部で悪乗りが発生したとなれば、圧倒的な武力でもないと止まらないだろう。
しかし残念だがその圧倒的武力など自分では発揮出来ないのだ。
「……君のとこの機竜持って来い」
「中で暴れさせられるわけないでしょう!? それに開発チームのメンバーが何故か西城さん目の敵にしてて殲滅対象になってましたよ」
「いやそのりくつはおかしい」
「なんか偶に西城さん宛に来る手紙がどうたら言ってました。この筆致は女に違いないとかなんとか」
金髪巨乳の性別女ではあるが半竜からの手紙で殺意を持たれるとは思っていなかった。
LowーGの文字を覚えて楽しくなったのか、確かに一時期頻繁に手紙がUCAT経由で来ていたので発信源はそこだろう。
「あれの差出人は半竜だぞお前……俺は普通の人間の女性が好みなんだが」
「もうなんでもいいから手伝ってください。止める側の人間少なくて困ってるんですから!」
「なんで少ないんだ」
「いやだって、今日はイブですよ? 既婚者はもう帰宅してるし恋人持ちはそもそも休み取ってます。あと今日は一応休日ですし」
あぁ、それはしょうがないと深く溜息。
「君は休みじゃないんだな」
「いや、俺の場合は彼女もココで仕事だったんで……明日から休み入れてます」
休みの前に余計な嫉妬で仕事の進捗に影響出るのは確かに嫌だ。
殆ど灰になっていた煙草を灰皿に突っ込む。
「しょうがない、振りかかる火の粉は払わないとイカンしな」
侍女式自動人形に協力を仰げば、恐らく鎮圧も容易いだろう。メイドに乱暴出来る男はいない。いないのだ。
「ガッデムスレイヤーMk-3は持ち主不在だしほんと面倒だなー。他に戦力居ないもんかね」
『おまつり?』
それまで後輩の胸ポケットでおとなしくしていた小さな草の獣が呟いた。
「あー、うん、お祭りじゃないぞー。ちょっと変なのが出たから退治するだけだぞー」
「草の獣に変な言葉覚えさせたくないよなぁ……後輩くん、君はこのまま戦力集めを続けてくれ」
分かりました、と後輩くんが走り去っていく。
食堂あたりで声を書ければ、暇な人がどちらかの陣営に加わるだろう。
「戦力集めたらちゃんと彼女の様子を見にいけよー!」
あえて言う必要もないだろうが、なんとなく心配になるヤツなので言っておく。
「うし、それじゃあちょっと頑張りましょうかね」
どうせ明日は騒ぐに騒げないから今日やっておこうという不届き者も多いに違いない。
気分転換とストレス解消に、合法的にアホをどつけるのなら好都合だ。
「……なんだか血生臭いクリスマス・イブになりそうだ」




「結局、自動人形達が用意してたケーキで沈静化するのかよ。やってらんねぇ」
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